― 食と人と、そしてビビアン・スーさんの記憶 ―
台湾を勧められる日本人は多い。
理由はいつも似ている。
「ご飯が美味しい」
「人が優しい」
「安心して歩ける」
海外なのに、どこか緊張しない。
この独特の心地よさが台湾にはある。
屋台の湯気、混ざる香辛料の匂い、
賑やかなのにどこか穏やかな夜市。
食は力強いのに、空気は柔らかい。
そして台湾という言葉を聞くと、
多くの日本人男性の記憶に浮かぶ存在がいる。
ビビアン・スーさん。
90年代、日本のテレビで見た彼女は、
「外国の人」なのに不思議と近く感じた。
たどたどしい日本語、
屈託のない笑顔、
透明感のある可愛さ。
異国なのに親しみやすい。
その印象は、台湾という国のイメージとどこか重なる。
強すぎず、押しつけず、
でも温かい。
台湾が日本人に心地よいのは、
文化の距離が近いからだけではない。
人の温度が似ているからだと思う。
きっと台湾を歩くと、
「どこか懐かしい海外」
という不思議な感覚に出会う。
それは食でも、街でも、人でも同じ。
そして少しだけ思う。
ああ、この空気の中で育ったから、
ビビアン・スーさんはあんなに魅力的だったのかもしれない、と
(今でも十二分に魅力的ですが)。
台湾は遠い国ではない。
日本人の感性に、静かに寄り添う場所だ。
